フルアルバムとしては1枚目、2013年のtricotの傑作アルバム『T H E』。
アルバムの出来がどうというよりも、1stシングル曲である「99.974℃」、2ndシングル「おやすみ」、おまけで7曲目「おちゃんせんすぅす」という3曲が良すぎる。
同じ時期にこれだけタイプの異なる名曲を生み出して1枚のアルバムに入れ込めるのは奇跡的ですらあり、このころのトリコの無敵っぷりがうかがえる。
99.974℃
BAKURETSUの名を体現するようなパワーチューン。
歌いだしの「私は少しでもかわイーかーい」の奇抜さにいきなり首を絞められる感覚。
ビックリ箱のように次から次へと飛び出す変拍子の展開。
女声3つで成される吸い込まれるようなコーラスワーク。
唐突に始まるサビも良い。
そして、これでもかと詰め込まれた爆裂パートの繋がりを支えているのが、ベースの絶妙なバランス感覚だ。
ライブでも一番の盛り上がりを見せる曲である。
おやすみ
すげぇ好きなんだよこれ。
5拍子のメロディラインにゆらゆらしていたら、6拍子のサビに入る直前に1拍の余白。
急に足場を外されて一瞬の浮遊感の後にズドンと落とされるような重力のグルーヴ。
2番のサビ前はもっと極端に荒れているが、荒れているようで、どうやら彼女たちにとってはこれで理路整然としているらしく、最初ギターの1本が適当なタイミングで入れているかと思われたストロークに、2周目でかっちりドラムとベースが合わせてくる。
聴き慣れぬビートで無自覚の領域をキリキリと刺激されて、ああこんなところにもツボがあったのかと新たな快感に気づかされてしまう感じ。
この感じがtricotというバンドの持つ中毒性だ。
おちゃんせんすぅす
すげぇ好きなんだよこれも。
なんて言ったらいいんだこれは。
おちゃんせんすぅすってなんだよ。
まずなんせ変な気分にさせるイッキュウ殿の歌声はもとより、ドラムkomakiさんの表現力がすごい。
まるで曲自体を再生し直してるような、不思議なブレイク。
タイトル画面で裏ワザコマンドを入力するファミコンソフトでコマンド入力失敗してリセットボタンを押す度にタイトル画面でテーマ曲がリフレインされるような、そんなブレイクだ。
そんな不思議な感覚を助長するMVも良い。
クセになる1曲。
以上。
さあ、次は誰がtricotを語る番だ?
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