轟音で拍子を弄ぶことに青春を費やした若者たちが、活動休止の前に残していった遺作。
実はAmazonで低評価のレビューを見つけてからついつい手に取るのを後回しにしてしまっていたが、やっぱり音楽だけは他人の評価を鵜呑みにしても良いことが無いなと猛省した。
3rdアルバムにあたる本作『輝かしい未来へ』は、決してTHE★米騒動というバンド活動の集大成として綺麗にまとめられた類のアルバムではない。
トリッキーなのになぜか腑に落ちるビートのギミック、笑顔とギャップ萌えのディストーション、そういった武器をさらに研ぎ澄ましつつも、次のステップへ、未来へと向かう前傾姿勢のアルバムだ。
オトコを嗤い、オンナを嗤い、そんな自分たちを嗤い、「どうでもいい芸術」と自嘲し、「輝かしい未来」と茶化しつつ、それでもなお前へ進もうとする動力の塊だ。
「錠剤」のビート転換を繋ぐバグったようなベースの愛くるしさよ。
「てじめ」の三・三・七の拍子で取ってつけたように叫ばれる世界の愛よ。
「セルアウト」という名のポップチューンで「表現者になんてなりたくない」と投げ売りされる薄情な自我よ。
「安定のため」なんて理由で活動休止を発表しつつこんなアルバムを創りあげるこの矛盾の大きさ、そしてこんなエネルギー溢れるアルバムの最後を余韻無くブツ切って終わりにする素っ気なさったらないが、そういうところもまたこのバンドの魅力なんだろう。
いつか時代が変わったりしていろいろ解決したらぜひともまた戻ってきてほしいものです。
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