自分がこのモーモールルギャバンというバンドを知ったきっかけは、あの強烈インパクト変態ソング「サイケな恋人」のミュージックビデオだった。
最初のうちは、BUMPファンに全面的に喧嘩を売っていく姿勢のラストが面白いというだけでMVをたれ流していたが、いつのまにか、シンプルなメロディラインの美しさと、それによく合う素朴な声(ゲイリーのぢゃねぇぞ)、そしてギターレス3ピースの絶妙なミキシングのバランスが心地よくて、ほとんど真顔で聴き入るようになった。
続いてハマりにハマったのが、YouTubeをたどって見つけた「裸族」。
まるで理由がわからないが、最後の「君は静かに瞬きもせず~」からのくだりで鳥肌が立って泣きそうになる。
その瞬間のカタルシス的な何かのために、前半2分をずっと身構えたまま聴いてしまう。
そのうち「裸族になれば裸でいられるのにね」という歌詞さえ、なんとも哲学的に聞こえてくる。
この「サイケな恋人」は『野口、久津川で爆死』に、「裸族」は『クロなら結構です』に、いずれも再録したものが一応収録されている。
けれども、「サイケな恋人」はMVのやつほど録音のミキシングに味がなく、歌が入ってから若干モタる感じも気になる。いま聴き直すとこれはこれで悪くない気もするけどね。
「裸族」にいたっては元の曲の良さを全面的に消した謎アレンジになっている。
両曲とも、ビデオと同じ版の録音は、ライブ会場で手売りしてた自主制作ミニアルバム『サイケな恋人』にしか入っていないと思う。
今見たらまあまあいい値段になっているようだが、もちろん俺は持っているぞ。という、半分ただの自慢である、この記事は。
2010年頃は謎の中毒性にやられてこれを馬鹿みたいに聴いていた。
頭の中が完全にモーモールルギャバン
— akio (@oika) 2010, 4月 8
「サイケな恋人」「裸族」以外の収録曲にも一応触れておく。全5曲。
「かみのけぬけた」は幕開けにふさわしい、ハイテンポでパワーのある曲で、わかりやすくバカバカしい。
ブリブリ唸るベースと、変な表現だけども、人間味あふれるドラムビートが良いのだ。
「俺風呂入るトゥナイト」は無駄に美しい名バラードである。
「俺、風呂入るトゥナイト 君の記憶流したいから」という詞に、いや普通に毎日入れよとつっこまずにはいられない。
ユコさんの無駄に素敵なコーラスワークも良い。
「ユキちゃんに振られた」は、他の曲に比べると若干聴き劣りするか。
けれど俗にユキちゃん三部作と(たぶん)呼ばれる3曲のひとつで、「ユキちゃん」→「ユキちゃんに振られた」→「ユキちゃんの遺伝子」と物語が続いていたりするので、ファンにとっては外せない曲だったりする。
「パンティ」でも「鼻毛」でも、5回も繰り返せば飽きて面白さはなくなるが、なおも真顔で聴き続けてしまう変な中毒性がこのバンドにはあった。
過去形にしたが今はどうかというと、少なくとも昨年の復帰第一弾『シャンゼリゼ』は、個人的にはあまり惹かれるものがなかった。
しかし、長い活動の末に唐突に変な持ち上げられ方をして、バンドと音楽を取り巻く環境が激変する中で、ライブ活動休止の末、再び戻ってきて新譜を提供してくれたことは素直に嬉しく、さらなる進化を期待してしまう気持ちもあるのだ。
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