興奮が冷めやらぬうちに拙速で書き上げようと思っていたが、夢から覚めた後の時間は速く。
ともあれ、今年のライジング・サン、個人的良かったとこダイジェスト。
モッチェ永井
初日のベストアクト。
ハナレグミのステージ終了とともに、RED STAR FIELDの30分の1くらいの、笑えるほどちっちゃなRED STAR CAFEステージでひっそりとスタートしたモッチェ永井。
イェイイェイ!というキャッチーな掛け声と、一目で敵ではなく味方だとわかる風貌。
「北の国から」のテーマを引用して、ご一緒に!と歌わせてから1オクターブ上げる裏切り。
「サクスフォン!」と言って、自分でパパッパパッパーとスキャットする遊び。
なるほど、場末の酒場での歌い方を心得ている。
それだけの話ならただの優秀なピエロだけれど、加えて確かな歌唱力と、独特の味わいのあるアーティストだった。
しっかりした声量だが聴き心地の良い歌声。
それがいい塩梅のスイングに乗っかって響く空間、なんとも心地良い夜だった。
アンコールまで起きたくらいだから、酔いしれていたのは俺だけじゃないと思うぞ。
大森靖子
2日目の一発目。
リハから既に100%フルパワーでとばすとばす。
20分間くらい存分に演った後での「以上でサウンドチェック終了します」のアナウンスに、観客からも笑いが漏れた。
ところが本番は本番で200%の圧巻パフォーマンス。
最後は「音楽は、魔法ではない。」の大斉唱。
得体の知れぬ感動に、目に涙を溜めて会場を後にする女性を多数目撃した。
RISING SUN ROCK FESTIVAL 2016 in EZO
— 大森靖子⚫️おおもりせいこ (@oomoriseiko) 2016年8月13日
ありがとうございました☀️🍅🐏🌽🐄💫💫#RSR pic.twitter.com/d1k8BgHUf3
2日目のベストアクトに選んでもいいくらい、圧倒的なエネルギーを放っていた大森靖子のステージは十分に素晴らしかったけれど、あえて言えば、それでもなお、全く未完成である。
たとえばバックバンドの極端な無個性さ。
わざとやってるんだろうけども、あまりにも勿体ない。
音楽的にいえばあのバンドは死んでる。
大森さんだけ登場してギター1本で歌っているときのほうがずっと鳥肌が立つ。
マーケットに受け入れられやすいように~とか、アイドルの枠だから~とか、わかったようなことを言ったらそんなもんクソくだらねーわバカヤロウとキレられそうだが、であればなおのこと音楽的なヤバさをもっともっと追求してほしいですよ。
まだ捨てないでくれ音楽を。
MOROHA
モッチェ永井と同じちっちゃなステージでMOROHA。
しかしモッチェさんのときと違って、スタートの前からステージ付近には大勢の待機客が。
正直MOROHAがここまで人気だと思っていなかったのでびっくりした。
調べたところ、どうも『しゃべくり007』で紹介されて話題になっていたらしい。
とはいってもまあ、そんなものはきっかけにしか過ぎんだろう。勝ち得るべくして勝ち得た人気。それもまだまだこっからだ。
ライブで見るのはエロフェス以来の2回目。
前回も野外で、座り込んだ観客を前に「わがまま言ってもいいすか…。自分、ダンスミュージックなんで。」とおどけて華麗に皆を立ち上がらせていたが、今回はもう少し真面目にかっこいいことを言ってた。
俺はみなさんの顔面を睨みつけながらライブをしたいが、座られていると上から見下す形になってしまう。下を向いて吐く言葉というのはなんちゃらかんちゃらだと、言い終わる前に皆がぞろぞろと立ち上がってステージ前へ詰め寄っていた。
ライジング終了。俺達は地面だろうが穴の中だろうがそこをメインステージに変えるだけなんですけど、座って弾く相方の顔が見れないと奥のお客が寂しがるんすよ。なのでWESSさん来年は、、よろしくです。
— MOROHA AFRO (@MOROHA_AFRO) 2016年8月13日
Photo by@HayachiNne pic.twitter.com/EV3iKiQaWf
NakamuraEmi
2日間の中で一番よかった曲を1曲だけ選べと言われたら、NakamuraEmiがTAIRA-CREWのステージで演っていた「めしあがれ」を選ぶ。
まだ音源として収録されてないんだろうか。
HIP HOP仕込みのフロウカルでフリーキーなグルーヴこそがナカムラエミの良さであるよと思っていたところに全くの不意打ち。
初めて聴いた曲だったんだけども、会場の雰囲気の素晴らしさも相まってか、変なとこについてた琴線に引っかかってボロボロと泣いてしまった。
NakamuraEmiは今年1月、33歳でメジャーデビューしたアーティスト。
本人の葛藤も歌に出まくっているけど、こういう売り方をするタイプの女性アーティスト(ぼんやりした言い方だけども)がこの歳でメジャーデビューというのはなかなか異例ではあるというか、端的にいうと商業的にはハンデを負った戦いだ。
しかしそれでも賭けてみたくなるくらいのポテンシャルが彼女に感じられるのも十分よくわかる。なんなら売れちゃってくれ。
ポップスにしてはあけすけ過ぎるほどに自己をさらけ出す歌詞を書くのが彼女の強みでもあるのかもしれないが、私事に偏り過ぎると逆に共感を得られなくなりそうなのが、老婆心ながら心配である。
たとえばあの「メジャーデビュー」という新曲にしても、置き所のなかったいろんな思いが詰まっているのはよくわかるんだけども、YAMABIKOを超えないと~とか、自分の名前出して「メジャーになって変わったな」とか言われても、別に本人以外にはピンとこないもんなんだよな。
BRAHMAN
2日目、GRAPEVINEを見ている途中で飲酒と睡眠不足による頭痛が限界にきて、テントに戻り、もう俺のRSRは終わりだというつもりで眠りについた。
熟睡していたつもりが、午前4時前、強風がテントを叩く音とともに大トリのBRAHMANが耳に入ってきて、夢現の中、気が付くと寝巻きのまま靴を履いてテントを飛び出していた。
TOSHI-LOWの歌声に引き寄せられるままにふらふらと進んでいくと、意外と観客間に余裕があり、するするとステージ近くまでたどり着いた。
前半はぼんやりとした寝起きの心地で聴いていたが、「ANSWER FOR...」でTOSHI-LOWが観客の上に飛び込んできたところで完全に目が覚めた。
呼応するようにダイブして挑みかかってくる猛者達をばったばったとなぎ倒しつつ歌い切って、そのまま、客の頭上で目の前の客の手を握ったまま、記憶に残る完璧なMC。
あれはね、一言一句正確に書き起こせなきゃ意味がないと思うので中途半端な引用は避けるけれど、説得力のある生き方をしてきた男の説得力のある言葉だったな。
実は、一時期からTOSHI-LOWがライブで毎回のように観客の上にダイブして歌うようになったことにちょっとパフォーマンス的なものを感じていて、あまり好きでなかったんだけど、今回のステージを見てなんだか理由がわかった気がした。
単純に、距離が遠すぎるんだろうな。
そのままMCに続けて歌う「霹靂」に、タイミングを見計らったように昇ってくる朝日。
この空間のすべてがライブの演出として存在するかのような良さで、なんだかんだ今年の大トリはBRAHMAN以外ありえなかったかもなと思えた。
BRAHMAN '16.8.13 北海道 RISING SUN ROCK FESTIVAL 2016 in EZO - Showcase Prints
総括
今年は2日間まるまる参加することができたが、デスクワーク仕込みの軟弱な身体でフルで楽しもうと思ったら、日射対策とペース配分をちゃんと考えんとダメだな。
出演アーティストとしては、松山千春・大黒摩季・八代亜紀みたいな名前がナチュラルに並んでいて、ますますロックかどうかなんてジャンルの境はなくなってきたなという印象。
というかもはやこれは「夏フェス」であって、「ロックフェス」なんて呼び方は死語なのかもしらんね。
あとは場内駐車場チケットが転売屋の巣窟になってるのをどうにかしてほしいっすわ(参考:RSR2016 テント購入者先行場内駐車場の落選率が酷いと話題に - NAVER まとめ)。
Related: