少し前に 最新の心肺蘇生法はここまで洗練されていた ってエントリーで、2010年のCPRガイドラインについて、いまどきの心肺蘇生法すげぇぜってことを書いたんだけど、そのガイドラインの2015年版がAHA(アメリカ心臓協会)より発表されました。
主な更新内容のハイライト日本語版PDFが以下からダウンロード可能です。
AHA 心肺蘇生と救急心血管治療のためのガイドラインアップデート2015ハイライト(PDF)
見たところ、2010年版からそれほど大きな変更はなさそう。
なので、2010年版を知らない人は先に2010年の更新内容について書いた過去記事を参照していただければ。
さて、目につく2015年の更新内容を簡単に、ハイライトからハイライトしてみるよ。
院内心停止と院外心停止の区別
病院内での心停止(IHCA)とそれ以外の場所での心停止(OHCA)とでは明らかに状況が異なるため、明確に区別してそれぞれに最適なプロセスが提言されるようになった。
我々市民が意識すべきはOHCAのほうすね。
ソーシャルメディアを利用した救助者呼び出しシステムの推奨
このへんはさすがに時代が反映されていきますね。
まだエビデンスは少ないが、根拠になっているのは、スウェーデンで、携帯端末による緊急指令システムの活用でCPR開始率が向上したという研究。↓これだな。
Mobile-Phone Dispatch of Laypersons for CPR in Out-of-Hospital Cardiac Arrest — NEJM
具体的には、CPRのトレーニングを受けたボランティアを1万人程度登録しておいて、院外心停止が発生したときに、携帯電話の位置情報を使ってそこから500m以内にいる登録者へ通知をとばす、というシステムでCPR率が向上されましたという研究のようだ。
エビデンスが少なくても、有害性も少ないので積極的にデジタル端末を活用していきましょう、とのこと。
胸骨圧迫のテンポと深さに上限設定
2010年のガイドラインで、胸骨圧迫(心臓マッサージ)のテンポが「100回/分程度」から「100回/分以上」に、深さが「4~5cm程度」から「5cm以上」に更新されたが、今回これに上限が設定されて、テンポが「100-120回/分」、深さが「5cm-6cm」となった。
前回の記事でも書いたが、多くのケースで胸骨圧迫は、テンポが速すぎることより遅すぎることが、深さが深すぎることより浅すぎることが問題になる。
だから上限をとっぱらいましょう、っていうのが前回の更新意図だったのだろうと思うけれど、今回の上限追加は、速すぎる/深すぎることが予後に悪影響を及ぼすことを示唆する予備的なデータに基づいている、らしい。
でもなんか、「重要なのは、圧迫の深さの上限に関するこの勧告が、過度に深い圧迫と生命を脅かすことのない損傷との関連を報告したきわめて小規模な1件の試験に基づいていることを救命者が知ることである」とか書いてあって、なんじゃそらという感じ。
このへんはまだ難しい問題のようである。
一次救助者によるナロキソン投与
一次救助におけるナロキソン投与についての記載が追加された。
これはなんじゃろと思ったら、薬物中毒が疑われるケースの話らしい。
↓こちらのブログが詳しかった。
AHA-BLS2015の改定 オピオイド中毒による呼吸停止とナロキソン注射|BLS-AED.net横浜ブログ
以上。
それにしても読んでみて思うのは、その業界の人らには馴染みある用語なのかもしらんが、BLSだのALSだのCPRだのECCだの、IHCAだのOHCAだのHCPだのEMSだのAEDだの、CORだのLOEだのRCTだの頭が痛くなるよAHAさん。
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